骨粗鬆症(こつそしょう症)

骨の内部構造が変化して弱くなり、骨折しやすくなった状態をいいます。健康な骨では骨の一部を壊して(骨吸収)それを修復する(骨形成)という働きが自動的に行われて、良い骨の状態を保っています。
骨粗鬆症ではそのバランスが崩れて、多くの場合骨吸収が骨形成を上回る状態になり、その結果骨量(骨密度)の減少を来します。
(画像1:正常な骨、画像2:骨粗鬆症で骨の内部の骨梁がまばらになった状態)

図1:正常な骨
図2:骨粗鬆症で骨の内部の骨梁がまばらになった状態



骨粗鬆症は遺伝的要因、加齢、閉経(女性ホルモンの影響)、薬物(ステロイドなどの服用)など多くの因子がかかわる病気です。骨の弱さは骨密度、骨の内部の微細な構造によって決まります。
診断は骨密度の検査結果と特殊な骨折のあるなしを加味した基準に基づいて行われますが、日本人全体で1000万人近くが骨粗鬆症であると言われています。

[ 症状 ]

骨密度が低いだけで、何も自覚症状がない場合もあります。急に痛みが発生した場合は腰や背中の骨折に
よるの痛みで、それにともなう移動能力の低下などが大きな問題になります。

骨が弱くなると転倒などによって容易に脊椎(背骨、腰骨)、大腿骨頸部(足の付け根)、橈骨(手首)、上腕骨近位(肩)などで骨折が起こります。

脊椎骨折:転倒や尻もちをついた際に背骨や腰骨がつぶれるように骨折します(圧迫骨折)。

  • レントゲン写真側面図、正常な腰の骨(画像3)と弱くなり圧迫骨折を起こした腰の骨(画像4)
図3:レントゲン写真側面図、正常な腰の骨
図3:レントゲン写真側面図、正常な腰の骨
図4:弱くなり圧迫骨折を起こした腰の骨
図4:弱くなり圧迫骨折を起こした腰の骨



多数の骨が圧迫骨折すると、背中が丸くなる背が縮むといった変形が起こります。
変形が強い場合には脊髄の障害によって下肢の麻痺が起こる場合もあります。
痛みによる移動能力の低下で、特に高齢者では他人の介助を要する状態に至る危険性があります。また、骨折やそれに伴う変形を契機に呼吸機能や消化機能が低下する、痴呆が進むといった合併症も起こります。

  • 大腿骨頸部骨折:転倒して足の付け根(股関節付近)に負担がかかることによって高齢者に多くみられる骨折で、手術を行わないで治療した場合の機能回復や生存率が悪いため、多く場合手術を行い早期に起立・歩行のリハビリを行います。
  • 橈骨遠位端骨折:転倒の際に手をついて体重を支えると、橈骨遠位端(腕の骨の手首に近い部分)が骨折します。短縮などの変形が強い場合は、手の機能を損なわないために手術が必要となります。

[ 診断・治療に必要な検査 ]

  • 血液・尿検査:血液検査は骨が弱くなるような他の特殊な疾患と区別するために行います。
    また、骨吸収と骨形成のバランスを知るために血液・尿検査を行います。
  • X線検査:脊椎の変形、骨折の有無、骨の内部構造を評価するために行う基本的検査です。
  • 骨密度(骨塩量):骨密度を数値的に評価するために行う検査で、骨粗鬆症の診断のためには必須です。
    測定部位は使用機器によって異なりますが、全身で計測するほか、腰椎、大腿骨頚部、橈骨遠位端などで行います。当院では橈骨遠位端で測定しています。
  • MRI:X線検査でとらえきれない骨の変化や骨折の診断に用います。矢印の骨の濃いグレーの部分は圧迫骨折を起こしている。その上の変形した骨は過去に圧迫骨折している(画像5:MRI写真)

図5:MRI写真
図5:MRI写真


[ 治療 ]

正しく栄養を取ること、適度な運動をすることが基本です。筋力増強、バランス感覚の維持・改善のためのリハビリも有効です。必要に応じて薬物療法を行います。
高齢者では骨折の予防のため環境整備、転倒防止対策も必要になります。治療は長期間を要しますが、将来に起こりうる骨折の危険性を少なくするために根気良く取り組むことが必要です。治療を続ける場合には、治療の効果を判定するために定期的に骨密度検査を行います。
実際に骨折してしまった場合には個々の骨折に対する治療を行います。

人の骨は20代、30代をピークに年齢とともに密度が減少します。
従来の薬物療法では骨密度の減少を抑えて維持することを目的に投与されていましたが、現在では骨密度の増加を期待できる薬も使われています。薬の選択は対象者の年齢や骨粗鬆症のタイプ(骨吸収と骨形成のバランス)などによって行います。また、同じ種類の薬でも毎朝服用するものや、週に1回だけの服用ですむものなどいろいろなタイプがあるので患者さんのニーズに合わせて処方します。

文責:糸田 瑞央