膝蓋骨脱臼の治療~膝の皿がはずれてしまった人、繰り返しはずれる人へ

膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨(膝のお皿)が膝の正面の本来の位置からずれることで、膝の構造・形態的特徴からほとんどは外側にはずれます。膝蓋骨は膝の横断面(輪切りの図)では、大腿骨正面の溝にはまるような位置にあります。膝蓋骨がこの溝を乗り越えてはずれることを脱臼と言い、乗り越えはしないがずれることを亜脱臼と言います。(図1)

図1
図1



膝蓋骨は大腿(太もも)側では大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という強い筋肉につながり、脛骨(すね)側では膝蓋腱(しつがいけん)という線維につながり脛骨に連結します。(図2)膝蓋骨は曲がった膝を伸ばす時に、滑車のような役割をして大腿四頭筋の筋力を脛骨側に伝えるのを助けています。


図2.膝の正面図と側面図
図2A

図2B



膝蓋骨脱臼は若い女性に多く発症し、スポーツ活動中などに起こります。膝蓋骨脱臼は、ジャンプの着地などで筋肉が強く収縮した時や膝が伸びた状態で急に脛骨をねじるような力が加わった時、膝蓋骨を打撲した場合などに起こりますが、元々膝蓋骨が脱臼しやすい身体的条件(膝蓋骨に向かい合う大腿骨の溝が浅い、膝蓋骨の形成不全、膝蓋腱の付着部が外側に偏位しているなど)を持っている人に起こりやすいと言われています。

[ 膝蓋骨反復性脱臼(しつがいこつ はんぷくせい だっきゅう)とは? ]

膝蓋骨脱臼が起こった後に、小さなきっかけや外力で脱臼をくり返すことを膝蓋骨反復性脱臼と言います。

[ 初期の治療 ]

脱臼が起こった場合、多くの場合膝蓋骨は病院に来る前に元の位置に戻ります(戻らなければ病院で戻します)。脱臼に伴って半数程度の患者で軟骨や骨の損傷が起こると言われますが、(図3)その程度によっては早期に手術が必要になることもあります。早期の手術が必要ない場合は、まず膝を装具(サポーター)などで固定します。痛みや関節の腫れが収まってきたら徐々に体重をかけて歩き、膝を動かすようにします。


図3.膝蓋骨脱臼に伴う膝蓋骨の骨折(X線)、説明図、CT像

図3A
図3A
図3B
図3B
図3C
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[ 再脱臼の予防 ]

膝蓋骨の脱臼が起こった患者の 20-50% に再脱臼が起こると言われています。また、再脱臼をしなくても、半数以上の患者で痛みや膝の不安定感などの症状が残ります。
再脱臼を予防するための治療として、リハビリや運動用の装具による治療を行います。リハビリは、膝蓋骨が外側にずれるのを防ぐように膝蓋骨の内側につく筋肉を筋力トレーニングや電気刺激によって強化する方法、膝蓋骨を外側に引き寄せる筋肉や靭帯をストレッチして柔軟性を高める方法、脱臼を誘発するような姿勢や動作を回避するような運動パターンを練習する方法などを行います。
運動用の装具は、膝蓋骨が外側にずれるのを防ぐ構造物のついたものを使用します。(図4)装具は脱臼して早い時期には日常生活で使用し、その後も一定期間はスポーツなどの機会に使用します。


図4.膝蓋骨脱臼予防用装具(右膝)

図4
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[ 再脱臼が起こった場合 ]

再脱臼が起こった場合は、上記の治療をくり返してもその後の再脱臼を回避することは困難になります。膝蓋骨脱臼をくり返して、スポーツや日常生活動作中に強い不快感や不安定感が続く場合には、手術による治療を考慮します。手術は、膝蓋骨を正しい位置に保持する構造物の中で最も重要なものと言われている内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の機能を回復させるために、その靭帯を作り直すことを主体に行います(図5)が、それぞれの膝の状態に応じて各種の手術方法を選択または組み合わせて行います。
適切な手術方法で治療した場合、良好な治療成績が得られます。


図5.内側膝蓋大腿靭帯再建手術の図と手術の傷(写真)

図5A
図5A
図5B
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元々膝蓋骨が脱臼しやすい身体的条件を持っている人の場合には、再脱臼をしなくても再脱臼予防の目的で手術が検討されることがありますが、手術を行うべきか否かは慎重に判断する必要があります。
内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)を作り直す手術治療における当院の標準的なプログラムでは、手術後1週より手術側の足に体重をかけて歩行を開始して、手術後2週間前後で退院可能となります。

 膝蓋骨脱臼をくり返すことによって、軟骨の損傷などの二次的な問題が起こる割合が高くなります。(図6)脱臼の予防、手術療法のいずれも重要で、慎重な判断が求められます。まずは、専門医にご相談ください。


図6.膝蓋骨の軟骨損傷(MRI 横断図)

図6A
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図6B
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文責:糸田瑞央