腰部脊柱管狭窄症 ~ 足がだるくなって長く歩けない方へ

腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)とは、加齢に伴う腰の骨の変形によって、脊髄や、脊髄から枝分かれして足へ向かう神経が圧迫されて神経痛などの症状が出現するものです。中年以降で下肢痛、しびれや脱力感、間欠性跛行(歩行開始後しばらくすると下肢の痛み・脱力などが出現して歩行継続が困難となること)を訴える患者は、まずこれを疑います。腰を伸ばすと症状がより強くなり、前かがみになると軽くなることが特徴です。下肢の血流の障害による間欠性跛行との区別が必要となります。

[ 症状 ]

主な症状は、腰痛・下肢痛、しびれであり、時に排尿や排便の障害も生じます。一定時間の歩行によって下肢の疼痛や脱力感のため歩行不能となり、前かがみ姿勢での安静によって再び歩行可能となります。

[ 診断 ]

専門医が詳細な症状を聞いて診察すると、およそ診断はつきます。レントゲン検査では腰の骨の変形を評価します(図1、2 : 正常の腰椎 図3、4 : 変形した腰椎)。MRI検査を行うと、レントゲンには写らない脊髄や神経の圧迫の程度を評価できます(図5、6 : 正常の脊髄 図7、8 : 圧迫によってくびれた脊髄)

図1 腰椎のレントゲン正面像(正常)
図1 腰椎のレントゲン正面像(正常)
図2 腰椎のレントゲン側面像(正常)
図2 腰椎のレントゲン側面像(正常)


図3 腰椎のレントゲン正面像(変形したもの)
図3 腰椎のレントゲン正面像(変形したもの)
図4 腰椎のレントゲン側面像(変形したもの)
図4 腰椎のレントゲン側面像(変形したもの)


図5 腰椎のMRI 側面像(正常)
図5 腰椎のMRI 側面像(正常)
図6 腰椎のMRI 水平断面(正常)
図6 腰椎のMRI 水平断面(正常)


図7 腰椎のMRI 側面像(狭窄例)
図7 腰椎のMRI 側面像(狭窄例)
図8 腰椎のMRI 水平断面(狭窄例)
図8 腰椎のMRI 水平断面(狭窄例)


[ 治療 ]

日常生活上の注意点として、負担のかかる労働や歩行を連続して長時間行わないことが重要です。家事を椅 子に座って行ったり、外出には杖や押し車を使用したりするなど、腰の伸展を避ける工夫も必要です。
薬物療法としては、急激な痛みに対しては消炎鎮痛剤(いわゆる痛み止め)が有効です。
間欠性跛行やしびれに対しては神経の働きを回復させる薬、神経の血流を改善させる薬が有効です。これらの薬は即効性ではありませんが、長期間使用すると、かなり症状が改善するケースもあります。薬物の効き目は人によって異なりますが、歩くのが困難だった人が、マラソンを走れるようになったケースもあります。
硬膜外ブロックや神経根ブロックなどの注射による治療が有効なこともあります。
神経の麻痺が重症な例、膀胱直腸障害の例、治療の効果がなく満足な歩行ができず日常生活に支障をきたす例では手術を検討します。手術は、脊髄・神経の周囲を拡大することによって圧迫を解除することが基本です。基本的な手術方法では、手術の翌日から自力で歩行できますが、傷の管理とリハビリのため2~3週間の入院治療を行います。

レントゲンやMRI上、腰骨の変性や脊柱管狭窄を認めても、それが必ずしも症状とは結びつかないこともあります。変形が重度でも薬物療法で症状が改善する例もあります。日常生活に障害のある例に対しては手術を検討しますが、神経の障害が進んでから手術を行っても安静時のしびれや麻痺などは回復が難しいこともあります。まずは外来で医師にご相談ください。

文責:糸田 瑞央