大腿骨頚部(転子部)骨折

足の付け根部分の骨折で、橈骨遠位(手首)や上腕骨近位(肩)と同様に、高齢者が転倒した際に骨折しやすい場所です。治療後に活動性が低下したり、寝たきりの原因になり易いためほとんどの人で手術が必要です。
わが国における全国調査でも1997年に92400人、2002年には117900人と年々増加傾向にあります。骨折を起こす原因はつまずきや階段・段差の踏み外しなどの転倒による外傷がほとんどですが、寝ていて体を捻じったり、おむつを交換した時など必ずしも大きなけがばかりではありません。これは歳を取っていくにしたがい骨が脆くなること(骨粗鬆症)と関係があります。

[ 分類 ]

骨折が起こる部位により二つのタイプに分かれます。一つは関節の中で骨折を起こす内側型と、もう一つは大腿骨転子部骨折(外側型)で関節包(関節を包んでいる袋)の外で骨折するタイプです。この二つの骨折はわずかな場所の違いでも症状や治療法が異なります。



[ 症状 ]

外側型の骨折では転んだ後に足の付け根からお尻や太ももあたりに激しい痛みを感じ、立つことも、歩くこともできなくなります。骨折のずれがひどい場合は膝やつま先が外側を向いてしまい、外観から見ても変形しているのが分かります。一方内側型の骨折は外側型に比べ痛みも軽く、受傷直後は歩けることもあります。股関節は身体の深い場所にあるために骨折による腫れが肘や膝のように目立ちません。自分の症状を詳しく伝えられない認知症のある方などでは、転倒した後、移動や着替えなどの時顔をしかめたり、嫌がったりするような兆候を見逃さないよう、周囲の方の注意が必要です。

[ 診断 ]

上記の症状があり、レントゲンで骨折があれば診断は確実ですが、内側型の頚部骨折は受傷直後にはレントゲンで骨折が写らないこともあります。この場合はしばらくしてからレントゲンで再検査するか、MRI(磁気で行う身体の断層検査)を行うことによってレントゲンで分からない時期の骨折を診断することが可能です。

[ 治療 ]

外側型の骨折ではスクリューやプレート、あるいは短い髄内釘を利用して骨折をつなぐ方法で治療します(図1)。内側型では大きくわけて二つの手術方法があります。一つは骨折したところが大きくずれてしまった場合に行う人工骨頭置換術という方法です。関節のなかで骨折し、骨折がずれたときには骨頭に栄養を送る血液の流れが遮断され、骨壊死(骨の血流が途絶え骨が死んでしまうこと)をおこすため、自分の骨同士では再びくっつくことが困難となります。壊死に陥る骨頭に換えて金属と一部プラスチックを組み合わせた人工骨頭に取り換えてしまいます(図2)。ずれがひどくない時には数本の金属性のピンまたはスクリューを使い固定します(図3)。手術時間も短く、人工骨頭と比べると大きな手術ではありませんが、ずれのない安定型の骨折でも4~21%の確率で骨頭壊死が発生するといわれています。このようなケースではもう一度手術をしなければなりません。 できるだけ早くけがをする前の状態に戻してあげるため、早期に手術を行って、早い段階からリハビリテーションを開始し、起立、歩行ができるように治療をすすめます。

図1
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図2
図2
図3
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文責:斉藤 公彦