オスグッド病

オスグッド-シュラッター病(0SD)は1903年に「発育期の活発な子供の膝に発生する外傷性の良性障害で、膝蓋腱の牽引力による脛骨粗面の剥離である」と報告されて以来、日常診療においてしばしば遭遇する疾患です(図1、2)

図1

図2


近年、成長期におけるスポーツ活動が盛んになるにつれOSDの発症頻度も高くなっています。
発育期の解剖学的特徴に運動ストレスが加わったことが直接的な発症原因ですが、成長過程などの個々の誘因も発症に関与しています。いったん発症すると治癒まで長期間を要することがあり、その間スポーツ活動も制限せざるを得ないことが多々あります。また剥離部が骨小骨として残存すると成人になってからでも疼痛が残り手術的治療も必要となることがあり、初期の対応が大切です。

[ 病態と発症要因 ]

発育期における運動ストレスが膝蓋腱付着部の脛骨粗面部に集中し、脛骨結節の骨化核および硝子軟骨が部分的に剥離骨折を起こした状態です。
OSDの発症には脛骨粗面の発育過程が大きく関与しています。脛骨粗面の骨化過程は、脛骨近位骨端部が前方へ発達し、脛骨粗面部の二次性骨化核が出現、脛骨近位の骨端核と癒合して舌状突起を形成、その後両骨端核が癒合して骨化が完成します。
脛骨粗面部の発育過程は4期に分類されています。

  1. The cartilaginous stage:骨化核の出現前(10才以前)
  2. The apophyseal stage:舌状部に骨化核が出現する時期(10~11才頃)
  3. The epiphyseal stage:脛骨結節の骨化が脛骨骨端に癒合しているが、脛骨結節の表層は軟骨で覆われている(13~15才頃)
  4. The bony stage:骨端線閉鎖(18才頃)(図3)

図3
図3



脛骨粗面部が軟骨や骨化核で形成されている時期は膝蓋腱と繊維軟骨で結合しており力学的に脆弱な部位です。スクワット動作、ランニング、ジャンプ動作の繰り返しにより膝蓋腱の牽引力で脛骨粗面部に剥離をおこります。
発症誘因として、発育急進期に膝周囲における骨の長軸成長と筋、腱の伸張のバランスのくずれがあげられます。大腿骨と脛骨の長軸方向の成長は約70%が膝関節部で起こるため、大腿四頭筋の緊張が高まり柔軟性が低下することにより脛骨粗面部へのストレスが増大します。発育急進期は男子で13才、女子で11才前後であり、発育急進期の時期に多く発症しています。成長過程は、年間身長増加量から身長速度曲線のパターンを描き、4期に分けられます(図4)。OSDは思春期スパートの立ち上がりから身長最大発育量年齢後の期間に多く発症しています。したがって発症の予防と対応には、身長の定期的な測定により身長成長速度曲線のどの区分に該当しているかを把握し指導に当たることが大切です。

図4
図4

[ 診断 ]

脛骨粗面部の痛みの程度は、歩行や階段昇降が困難な状態からランニングが困難な状態まで個々の症例により異なります。脛骨粗面部に膨隆、圧痛、熱感があります。大腿4頭筋やハムストリングスの硬さがしばしま見られます。
X線所見は、病気の進行程度により、

  1. 初期:限局性透亮像(図5)
  2. 進行期:分離、分節像(図6)
  3. 終末期:遊離体像(図7)

に分けられています。

図5
図5
図6
図6
図7a
図7a
図7b
図7b


[ 治療 ]

( 保存的治療 )
OSDは保存療法が第1選択です。
Apophyseal,epiphyseal stageではOssicleを形成せずに治癒像が得られることが最終目標です。
保存療法の基本は脛骨粗面に負荷を与えないために活動制限が必要です。炎症症状が強いときは、非ステロイド消炎剤含有の湿布や軟膏の使用、アイシングを行い炎症症状を鎮める処置を行ないます。膝蓋腱へのカウンターフォースを加え、脛骨粗面への緊張を軽減する目的でオスグットバンドの装着も効果があります(図8)

図8
図8



大腿四頭筋やハムストリングスの相対的な短縮があることが多く、ストレッチを徹底させます。さらに大腿四頭筋の強化として、大腿四頭筋の等尺性収縮や坐位での膝伸展運動から始め、両脚のスクワットへと負荷を増やしていきます。次の段階として片脚のスクワットを行います。
階段昇降を支持なくスムースに行えるようなり、片脚での蹲踞、けんけんが痛みがなく安定して行えるようになったら、軽いランニングを許可します。その後それぞれのスポーツに徐々に復帰させます。

( 外科的治療 )
骨端線癒合後に骨小骨が残存し、痛みのためスポーツ活動に支障をきたしているときは、外科的治療が選択されます。
手術は骨小骨を摘出し、脛骨粗面部の骨隆起部を切除をし平にします。
術後は膝蓋腱付着部の腱実質部あるいは周囲の炎症も混在していることが多いため、伸展位の膝装具固定を1-2週間行います。
術後1週から松葉杖歩行で1/2荷重から許可し,大腿四頭筋筋力訓練と自動屈曲を行い、3週で全荷重歩行を許可します。スポーツ復帰は12週を目標としてリハビリをステップアップしています。痛みが強く、日常生活にも支障があるときは骨端線癒合前に骨穿孔術(ドリリング)という手術方法が行なわれることがあります。

文責:菅原 誠