腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリテーション

○保存療法

脊柱管の狭窄は、加齢による骨の変形や靭帯の肥厚などにより起こります。そのため、手術をしない限り狭窄部を拡大することはできません。
また、姿勢の変化に伴い、狭窄部で神経を圧迫するストレスが変わります。保存療法として行うリハビリは、今後症状を悪化させないように、なるべくストレスの少ない姿勢を保持することや動作を獲得することが目的となります。
 
急激な痛みやしびれが起こった場合は、それ以上症状を悪化させないために安静をとります。
しかし長期間の安静は筋力や柔軟性が低下するため避けるべきです。慢性的に症状がある場合や、急性期からある程度経過し痛みが落ち着いたら、筋の伸長や強化、血流の改善を促すため適度な運動療法を行います。
なるべく腰をそりすぎないような姿勢を保つために、腰をまるめるようなストレッチや体幹を強化する運動が適応となります。ここでは自宅で道具など使わずに簡単にできる運動をご紹介します。

図a
図a

 
・ストレッチ
腰のそりを強めてしまう腰背部の筋のストレッチを行います。
両脚を抱えて体を丸め、両膝を胸の方にひきつけるようにします。
反動をつけずにゆっくりと行います。
呼吸を止めずに20~30秒間同じ姿勢を保持します。これを3回繰り返します(図a)
注意点として、腰をよりまるめるようにお尻をしっかり持ち上げることに気をつけて行います。

図b
図b

骨盤を傾かせて腰のそりを強める股関節の前の筋肉のストレッチを行います。
伸ばす方の脚を後ろにして立て膝をします。
手を前の方につき、前になっている足を曲げていきます。
後ろに立てている膝の位置をかえないように、股関節の前を伸ばします。
呼吸を止めずに20~30秒間同じ姿勢を保持します。これを3回繰り返します(図b)
注意点として、腰をそらさないように股関節の前面を伸ばすことが大切なので、骨盤を起こしたまま前方へ移動させるように気をつけます


図c
図c

 
・腹部筋力トレーニング
腰を安定させる腹部の筋力強化を行います。
仰向けに寝た状態で、両膝を90度曲げて立てます。
腰と床の間に手を置きます。
手を床の方に押し付けるように、お腹に力を入れて腰を丸めます。
5秒間くらい押し続けます。
このとき息を止めないように注意します。
10回×2セット(図c)
手を腰の下にいれることが難しい場合は、タオルなどをかわりにおいて行います。
注意点として、逆に腰をそる形にならないように気をつけて行います。

○手術後のリハビリテーション

痛みや歩行障害が強い場合や、保存療法を行っても症状が改善しない場合には、手術により狭窄部を拡大する場合もあります。
手術後のリハビリは、入院中の活動量低下による筋力低下や柔軟性低下を最小限にするために、早期から行います。
血流改善、筋緊張軽減、鎮痛などに効果のある電気治療や温熱治療といった物理療法や、軽い下肢の筋力トレーニングやストレッチ、歩行練習などから開始します。時期に合わせて腹部の筋力トレーニングを行っていきます。
 
・下肢筋力トレーニング
椅子に浅くこしかけて、両脚を肩幅くらいに開きます。腹筋に力をいれたままゆっくり立ち上がります。
この時腰をそらさないよう注意します。
股関節と膝をしっかり曲げて座ります。
10回×2セット(図d)

図d(1)
図d(1)
 
図d(2)
図d(2)


○日常生活での注意点

腰を大きくそらしたり、さらにひねるそうな動作はより神経を圧迫するストレスがかかるため注意します。
とくに痛みの強い場合や手術直後では、日常生活の動作でなるべく腰に負担をかけないよう注意することが重要です。
ベッドから起き上がる際は、まず股関節と膝関節をまげて、そのまま体をひとかたまりのようにして横向きになります。
次に、肘で体を起こしながらゆっくりと両足をベッドの下におろします。さらに肘を伸ばしていって座ります(図e)
 

図e(1)
図e(1)
 
図e(2)
図e(2)
 
図e(3)
図e(3)


立ち上がる際は、肘掛やテーブルなどにつかまり、腰をそらしたりねじったりしないよう注意します。
一定時間の歩行により症状が起こる場合は、こまめに休憩をとったり、やや前かがみになるように杖などを使用します。
 
当院では・・・
腰をそりすぎている不良姿勢は、猫背や股・膝関節の可動域制限、筋力低下から起こっている場合もあります。
当院では、治療前にリハビリスタッフが姿勢の評価を行います。その結果に基づき、胸郭のエクササイズや股関節・膝関節周囲の問題に対するアプローチを行い、脊柱全体や下肢からの影響を含めた姿勢の改善を行っていきます。
また電気治療・温熱治療を併用するなどして、痛みやしびれの改善を目指します。