反復性肩関節脱臼術後のリハビリテーション

反復性肩関節脱臼とは、外傷性(転倒等)で肩関節脱臼後に不安定性が残存し、肩の脱臼・亜脱臼を繰り返す状態のことです。反復性に移行した場合、保存療法(リハビリテーション等による筋力強化)では、脱臼、亜脱臼を完全に防ぐことはできません。上記の場合、手術治療が選択されます。
ここでは、当院における関節鏡視下に関節唇(肩の受け皿にある組織)や靭帯(関節の周りにあるすじ)等を修復した後の術後早期から約3ヶ月までのメディカルリハビリテーション(医学的管理下の中で行うリハビリテーション)と術後3ヶ月から6ヶ月までのアスレティックリハビリテーション(スポーツ復帰に向けたリハビリテーション)を具体的に紹介します。

リハビリテーションの実際

術後1日~3週目(安静・固定期間)

この時期は修復部位の安静・固定期間であり、外固定はスリング装具を使用します(図1)。肩関節の可動域訓練は行えないため、修復部位にストレスがかからない部位の訓練を開始します。肩甲骨周囲筋の筋力強化、肘関節の屈伸、握力強化、肩関節の動きを伴わない筋力強化等を実施します(図2)。また、術直後から2週間目くらいまでは、肩関節周囲に熱感があるため、アイシングを実施します。

図1 術後のスリング固定
図1 正面
図1 術後のスリング固定
図1 側面


(図1)術後のスリング固定

腕を前に押す
図2 腕を前に押す
腕を横に押す
図2 腕を横に押す
腕を後ろに押す
図2 腕を後ろに押す


(図2)肩関節等尺性筋力訓練(関節の動きを伴わない筋力強化)
腕を後ろに押す場合、前から肩関節を支える

術後3週目~6週目

術後3週目から外固定を除去し、肩関節の挙上等の可動域訓練を開始します。前述したように肩関節の修復した組織にストレスがかからないように注意して実施します(図3)
また、肩関節の安定化を目的に腱板(肩関節の中にある小さな筋肉)訓練を開始します(図4)

早期のうちは過度な挙上は避ける
図3 早期のうちは過度な挙上は避ける
水平伸展を避けるために枕等を腕の下に置く
図3 水平伸展を避けるために枕等を腕の下に置く


(図3)肩の挙上訓練 セラピストによる他動運動

図4
図4


(図4)腱板訓練(棘上筋を中心に)肩甲骨を背骨に寄せたまま、親指を上にしたまま、
腕を45度くらいまでゆっくりと挙上し、ゆっくりと戻す。

術後6週目~12週目

この時期は修復部位の癒合が進み、ある程度の強度が期待されるため、可動域訓練は前述で制限していた方向も徐々に開始します。腱板訓練は、セラバンド(低負荷のゴムチューブ)やペットボトル(水を入れて重みを調節)や自分の腕の重みを利用して、徐々に負荷量を増大させていきます(図5)。体重をかけた腕立て伏せ等の負荷の高い運動は術後12週以降に実施します。

図5
図5


(図5)腱板訓練 ペッドボトル等を利用して小さな負荷から開始する

鏡視下修復術後3ヶ月目までのリハビリテーションのポイント

  1. 修復した関節唇や靭帯にかかるストレスを回避しながら実施します。
    過度に肩関節外旋(外側にひねる動作)や水平伸展(腕を後ろに引く)を避けます(図6,7 )
  2. 図6 危険な肢位① 肩関節外旋
    図7 危険な肢位② 肩関節水平伸展

  3. 術後3ヶ月程度で修復部位の治癒が得られるのでそれまで無理はしません。


術後3ヶ月~5ヶ月

この時期は修復した部位に十分な強度が得られるため、可動域訓練は全方向の可動域訓練を開始します。筋力訓練は、上肢CKC(手を床についた状態での訓練)等を開始し、積極的な筋力強化を図ります(図8)

図8 正しいフォーム
図8 誤ったフォーム


(図8)腕立て伏せ 誤ったフォームで実施すると肩の前方に伸張ストレスが生じる
肩と肘を結ぶラインが一直線になるところまで体幹を降ろす

術後5ヶ月以降

肩関節の可動域の回復に応じてウエイトトレーニングの許可をします。スポーツ種目に応じて、肩関節の再脱臼防止のために脱臼肢位でのプライオメトリクス訓練(速い動きの中で脱臼を抑制する筋肉を反射的に収縮させるトレーニング)を行います(図9)。これらを実施し、不安や問題がなければスポーツに完全復帰していただきます。

図9
図9


図9
図9


(図9)肩関節脱臼再発予防のためのプライオメトリクス訓練
仰向けの状態で肩・肘を90度に曲げた状態で軽めのボールを落としてもらい、
ボールを柔らかく受け止めて素早く反射的にボールを投げ返す