中高年の運動の意義は?

機械文明の発達とともに、身体活動の低下が進んでいます。現在のわが国では、家庭でも職場でも、電化や省力化が進んでいるため、意識して体を動かさないと、すぐに運動不足になってしまいます。特に中高年における身体活動の低下は、生活習慣病の増加と深い関係があることが明らかにされています。

1996年の成人3,030人を対象とした健康作りに関する意識調査によれば、81.5%の人が運動不足(大いに運動不足だと思う:35.6%、少し運動不足だと思う:45.9%)であることを感じています。一方「現在運動している」人は全体の27.5%に止まっています。運動はエネルギー源の使い方で、無酸素運動と有酸素運動の2種類に分けられます。無酸素運動は、筋肉に酸素の供給が間に合わない短時間の運動です。陸上競技の100m走が代表的な運動です。有酸素運動は、筋肉に充分な酸素が行き渡り、運動が長時間継続される運動です。代表的な有酸素運動は、陸上競技のマラソンやジョギング、自転車、水泳などがあります。
中高年にとって、健康維持に必要なのは有酸素性の持久力を高めることです。なぜならば、有酸素運動により心・肺機能が改善するばかりでなく、糖尿病や心疾患などの予防にもなるからです。また有酸素運動では、脂肪がエネルギー源として利用され筋肉が使われるため、身体機能の向上が期待されます。有酸素能は体がどのくらい酸素を利用して運動ができるかの能力であり、最大限酸素を利用してできる運動能力を、最大酸素摂取量として表せられます。この最大酸素摂取量を高めるためには、心拍出量の増大、肺換気量の増大、筋肉の血管網の発達、筋肉の生化学的反応などが向上することが必要です。そのためには、筋肉に負荷をかけてトレーニングするしか方法がありません。

1968年、アメリカのクーパー博士は有酸素運動、すなわちエアロビック運動を提唱しました。そしてこの有酸素運動の概念が普及し、スポーツの大衆化が始まったと言っても過言ではありません。健康維持のための運動量の目安となるように、様々なスポーツに対し、各々の運動強度、運動時間から体重当たりの酸素消費量を測定して点数表示をしました。1点が体重1kg当たり7mlの酸素消費量に相当します。
そして、心臓・循環作業能力の維持のためには、1週間に30点に相当する運動が必要であることを説いています。30点の酸素消費を得るために必要な運動は、2kmの水泳では50分、10kmのランニングでは1時間、20kmのサイクリングでは1時間の運動となります。一方、歩行では、40kmを8時間、テニスでは12時間、ゴルフでは150ホールのプレイが必要となります。

厚生労働省による健康作りのための運動指針2006による健康作りのための身体活動量の目標は、週23エクササイズ(メッツ・時)の活発な身体活動(運動・生活活動)を勧めています。ここでエクササイズとは身体活動の量を表す単位で、身体活動の強度(メッツ:身体活動の強さを安静時の何倍に相当するかを表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、表)に身体活動に実施時間(時)をかけたものです。
なお、この目標に含まれる活発な身体活動とは、3メッツ以上の身体活動です(表)。しかし、いくら効率が良い運動であっても、普段全く運動をしていない人が、いきなりランニングなどを始めるのは危険です。中高年は体力の個人差が非常に大きく、潜在的な病気が隠されている場合があります。運動を始める前にメディカルチェックを受け、各人に合った、安全な運動から始めることが大切です。

「3メッツ」以上の運動(身体活動量の目標の計算に含むもの)

「3メッツ」以上の運動(身体活動量の目標の計算に含むもの)
 メッツ  活動内容  1エクササイズに相当する時間 
3.0 自転車エルゴメーター:50ワット、とても軽い活動、ウェイトトレーニング(軽・中等度)、ボーリング、フリスビー、バレーボール 20分
3.5 体操(家で。軽・中等度)、ゴルフ(カートを使って) 18分
3.8 やや速歩(平地、やや速めに=94m/分) 16分
4.0 速歩(平地、95~100m/分程度)、水中運動、水中で柔軟体操、卓球、
太極拳、アクアビクス、水中体操
15分
4.5 バドミントン、ゴルフ(クラブを自分で運ぶ。待ち時間を除く。) 13分
4.8 バレエ、モダン、ツイスト、ジャズ、タップ 13分
5.0 ソフトボール又は野球、子どもの遊び(石蹴り、ドッジボール、遊戯具、
ビー玉遊びなど)、かなり速歩(平地、速く=107m/分)
12分
5.5 自転車エルゴメーター:100ワット、軽い活動 11分
6.0 ウェイトトレーニング(高強度、パワーリフティング、ボディビル)、美容体操、ジャズダンス、ジョギングと歩行の組み合わせ(ジョギング は10分以下)、バスケットボール、スイミング:ゆっくりしたストローク 10分
6.5 エアロビクス 9分
7.0 ジョギング、サッカー、テニス、水泳:背泳、スケート、スキー 9分
7.5 山を登る:約1~2kgの荷物を背負って 8分
8.0 サイクリング(約20km/時)、ランニング:134m/分、水泳:クロール、
ゆっくり(約45m/分)、軽度~中強度
8分
10.0 ランニング:161m/分、柔道、柔術、空手、キックボクシング、テコンドー、
ラグビー、水泳:平泳ぎ
6分
11.0 水泳:バタフライ、水泳:クロール、速い(約70m/分)、活発な活動 5分
15.0 ランニング:階段を上がる 4分