ランニング功罪

運動不足になりがちな現代人にとって、ランニングは最も手軽に、しかも場所と時間を選ばずに行える運動です。ジャージとシューズさえあれば、いつでもどこでもすぐに走り出せます。個人の体力レベルに応じて、走る時間、距離、スピードを自由に選ぶことができます。ランニングの体に及ぼす影響にはプラスの面とマイナスの面の両面があります。
プラスの面で最も優れている点は、スタミナ(持久力)がつくことです。スタミナがつくことによって疲れづらくなり、日常生活がいきいきと活動できるようになります。ランニングによりスタミナがつくのは、心肺機能が高まり、効率よく酸素を利用できる体になるからです。

またランニングを継続することにより体の様々な代謝機能も高まります。特に糖質や脂質の代謝がよくなり、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病の予防にもなります。ランニングを継続している人の善玉コレステロール値は高く、動脈硬化の予防に一役かっていることが知られています。
また、普段から運動を継続し、体の機能が維持され体力が優れている人ほど死亡率が低いことも明らかにされています。
ランニングは頭の働きも活発にします。ランニング中またはランニング後の冴えた頭で、色々なアイデアや考えがまとまることがあります。また精神的なストレスの解消にもなります。走る大脳生理学者として有名な久保田 競教授は、「私が走るのは「心」の安定を求めての「楽しみのためのランニング」「頭のためのランニング」である。

毎朝、起きたら顔を洗って歯を磨くように、週2時間決まった日時にランニングを続けられるようになったら、「心の健康」だけでなく「体の健康」も同時に保証される。体の健康だけを求めてランニングに励んでも、「頭の健康」は必ずしも得られるものではない。と述べています。
マイナスの面としては、ランニング障害と言われる様々な体の障害があります。障害を起こす共通の原因として、“走り過ぎ”が挙げられます。私達が行った中高年ランナーの調査では、月200km以上走り込んでいるランナーに障害が多く発生しています。ランニングの着地のとき、体重の約3倍の力が下肢に加わっているため、ランニング障害は、膝、下腿、アキレス腱、足など下肢に多く発生しています。膝痛、アキレス腱炎、足底筋膜炎、シンスプリントと呼ばれる脛骨過労障害、脛骨や腓骨の疲労骨折などが主な障害です。
特に膝や足に変形がある人は要注意です。O脚やX脚の膝の人、偏平足や甲高の足の人は障害が発生しやすくなります。走り過ぎには十二分に注意するとともに、ストレッチングを含めた準備運動は必ず行う必要があります。

特に時間がない時などついつい準備運動を怠りがちになります。他人との競争や自己タイムにこだわり過ぎないようにすることも肝要と思われます。
またランニングだけでなく、水泳や自転車、登山など他の運動を併用することも障害の発生の予防に役立ちます。日頃から体の手入れに注意し、生涯ランニングを楽しめるようにしましょう。