松田整形外科記念病院の医療への取り組み、スポーツ整形への取り組み、新しい技術を紹介します

代表的なスキー傷害②・・・スキーにおける膝前十字靭帯損傷の発生機転

コラム:スキー傷害と予防

従来、転倒時に膝が、 1)外反・外旋された時、2)内反・内旋された時、3)過伸展された時に受傷するとされてきました(図7)。
米国のJohnsonnらは初心者等が転倒したとき膝が過屈曲したときに発生するFantom foot mecanism(図8)と、スキーレーサー等がジャンプの着地時にスキーブーツが支点となって、下腿に前方引き出し力が加わって発生するBoot induced mechanism(図9)を提唱しています。

図7

 

図8

 

図9

私達はACL損傷と診断されたスキーヤー80名(男性34名、女性46名、平均年齢23.8歳)を対象に受傷機転を調査し、興味ある結果が得られました。受傷側は右37名、左43名であり、合併損傷は外側半月板損傷が17名と最も多く、内側半月板損傷が14名、内側側副靱帯損傷が9名、両側半月板損傷が6名、後十字靱帯損傷が3名、外側側副靱帯損傷が2名でした。対象のカルテ及び直接問診により、運動レベル、受傷機転について調査しました。受傷機転は、ターンの方向、荷重側、転倒方向、ポップ音(靭帯が断裂するときの音)の出現時期等、受傷時の状況を詳細に聞き出し受傷機転を推測しました。損傷患者の年齢別割合では、10代が37名と最も多く、20代26名、30代11名、40代4名、50代2名でした。運動レベルは56.2%が競技スキー選手等のハイレベルでした(図10)

図10-a


図10-b


図10-c

受傷機転は、転倒時の受傷は37名46.3%であり、滑走中の受傷が42名52.5%、衝突時が1名1.2%でした。滑走中の受傷は、エッジング時など膝屈曲・外反・外旋強制によるものが22名27.5%と最も多く発生していました(図11)

図11

さらに、スキーヤーのレベルと受傷機転との関係を検討しました。患者をレクレーショナルレベル群と、競技スキー選手、基礎スキー選手、インストラクターからなるハイレベル群に分けて検討しました。レクレーショナルレベル群では、転倒時の受傷が全体の69%と最も多く、ハイレベル群では、滑走中の受傷が71%とレクレーショナルレベル群と対照的でした(図12)

図12-a


図12-b

すなわち、滑走中バランスを崩したとき、レクレーショナルレベルでは姿勢を保持出来ずに転倒し受傷することが多いのに対し、ハイレベル群では転倒を避け姿勢を立て直そうとした際、膝に過度の回旋力が加わった場合や、体幹が後方に移動し、大腿四頭筋収縮による自動的な前方引き出し力と、ブーツの後方が支点となって他動的な前方引き出し力が複合さらに回旋が加わりACL損傷が発生されるものと推測しました。あるスキーヤーの受傷時の写真です(図13)

図13-6

図13-2

図13-3

図13-4

図13-5

図13-6

2. 膝前十字靭帯損傷の特徴

表1は病院を受診したスキーにおける外傷・障害の男女における内訳です。男性ではMCL損傷が最も多く次いで腰痛症、ACL損傷の順であったのに対し、女性ではACL損傷が最も多く、次いで膝痛、MCL損傷の順でした。体操、バスケットボール、ハンドボール等でも女性にACL損傷が多いことが報告されています。女性にACL損傷が多い原因としては、女性ではACLが存在する顆間窩が狭くACL自体が細いこと、体重に比して筋力が足りないこと、月経周期によるホルモンレベルの影響、生理的な膝周囲筋の筋活動の相違等が考えられています。

女性 男性
前十字靭帯損傷 35 内側側副靭帯損傷 38
膝痛 17 腰痛症 35
内側側副靭帯損傷 16 前十字靭帯損傷 21
肩挫傷(腱板損傷含む) 10 肩挫傷 18
腰痛 9 足関節捻挫 17
母指MP関節尺側靭帯損傷 8 膝関節痛 14
膝関節捻挫 7 肩関節脱臼 10
半月板損傷 6 鎖骨骨折 10
頸椎捻挫 5 半月板損傷 9
鎖骨骨折 3 膝蓋靭帯炎 9
大腿骨骨軟骨骨折 3 頸椎捻挫 7
膝蓋靭帯炎 3  
※当院におけるスキーの疾患頻度(人)